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◆思い出の空・サフィレット◆

サフィレットガラス。
ガラスや古いアクセサリーが好きな方なら、
1度は目にしたことのある名前かもしれません。
別名のサフィリーンや、ヴォクソールと呼ばれることもあります。
現在は新たに製造されておらず、
今この世にある限りのビンテージやアンティークのものしか
手にすることができないガラスです。
サフィレットに魅せられたファンは世界中に数え切れないほどいます。
私もそのうちの一人です。
魅力のひとつはやはり、その独特な色合いの美しさにあるでしょう。
1粒のガラスの中にブルーとブラウンが揺らぐようにきらめく様子は、
他に類を見ないほどです。
しいていえば、モルフォチョウの翅の色。
正面から見ると目の覚めるような青ですが、
斜めから見ると茶色が現れます。
あるいは夕暮れ時の空の色。
淡い水色の空に茜色に染まった雲が浮かんでいる、
そんな夕方の空を見上げたことはありませんか。
郷愁を感じさせる色合いです。

今この世にある限りしかない貴重さも手伝ってか、
サフィレットは多くの伝説と謎に彩られていることでも有名です。
製法を門外不出の秘密として守り続けていた
唯ひとつの一族が絶えたために、
今では誰も作ることができないという話を始め、
まるで錬金術の話をしているような、
材料に金や砒素が使われているという話、
はたまた、サフィレットを巡って命を落とした人がいるという噂まで、
例を挙げればきりがないほどです。

そんなサフィレットの謎を解こうと、
実際に成分を分析なさった方がいらっしゃるそうです。
高度な分析方法を用いて詳しく調べたそうですが、
金や砒素といった期待されていたような珍しい成分は
含まれていなかったそうです。
特別なのは成分ではなくて製法なのだろうということでした。
サフィレットの色を出せるガラス職人は限られていたらしいとのことです。
何か説明できないようなコツが必要なのでしょう。

再現が難しいものだとしても、
サフィレットの独特の色はどうやって現れているものなのでしょうか。
青と茶のどちらがサフィレット本来の色なのかも
よく分かっていないようです。
そんなサフィレットの、色の秘密について考えてみました。
少し物理学的な方向になるのですが、
それを今から書いていきたいと思います。
魅惑的なサフィレットの色を科学的に考えると味気なくなってしまう。。。?
どうか、そうはおっしゃらずに。
とはいえ、物理を専門的に学んでいたことはありませんので、
あまり深い内容を書くこともできません。
それでもよろしければ、もうしばらくの間お付き合いください。

始めのほうで書いた、モルフォチョウの羽と空の色の話に
今一度戻らせていただきます。
実はどちらも、それ自体に色の付いていないものなのです。
モルフォチョウの青は、隣粉の表面の特殊な形が
青い光のみを反射することによります。
空の色は、大気中に含まれる窒素や酸素の分子が
太陽光が散乱することによります。
とても小さな世界の話となっていますが、
このような仕組みで発色した色を「構造色」といいます。
サフィレットガラスに色をつける材料として
特殊なものが使われていないのであれば、
実は初めから色の付いていないガラスであったと、
その色が構造色によるものであると考えることはできないでしょうか。

サフィレットガラスは、ガラスストーンやビーズとして
大きさや形もさまざまに加工されています。
表面の質感もつるりとしたものからマットなものまであります。
ですので、モルフォチョウの翅の場合のように、
表面に特殊な凹凸があるとは考えにくいです。
他にも構造色が現れる仕組みはいくつかあるのですが、
今ここで注目したいのは「レイリー散乱」です。
レイリー散乱は光の波長よりも小さい粒子による光の散乱です。
そしてこの仕組みによって現れる構造色の代表的な例は、空の色です。
空の色の仕組みについて、もう少し詳しく書いていきます。

空の色は、太陽光が大気を通り抜ける距離で決まります。
昼の太陽光は私たちに向けて大気に対して
ほぼ直角に通り抜けてくるため、
大気を通る距離は短くなります。
その間、大気中の窒素や酸素の分子に
太陽光は散乱されることになるのですが、
太陽光に含まれる様々な色の光のうち、
青い光は特に散乱されやすい性質を持っています。
くわえて、散乱は光の進む方向にもっとも強く起こるので、
空を見上げる私たちの目には青だけが空にあるように見えるのです。
朝と夕方の太陽光は私たちから見て
大気を斜めに進んでくることになるので、
大気を通ってくる距離が長くなります。
このとき散乱しやすい青い光は、
私たちの目に届く前に散乱されきってしまいます。
散乱されにくい赤系の光だけが目に届いて空が赤く見えるのです。

光を散乱させるのにちょうどいい大きさの粒子が、
内部に散っているガラスをサフィレットガラスだと考えると、
揺らぐ色が青と茶であって他の色ではないこと、
空の色に似ているということが、ごく当たり前に感じられませんか。
ガラスを単なる平たい板ではなく、ガラスストーンやビーズといった
様々な角度から光が入り出て行く形に整えたことで、
2色が複雑に現れるサフィレット独特の見た目が
生まれているのではないでしょうか。
もちろん、光の入射や反射、ガラスによる光の屈折などを
厳密に計算しなければ、本当のところは分かりません。

構造色はこれからの時代の産業などに役立てようと
研究が進められている、いわば未来の色です。
サフィレットの色が構造色によるものならば、
過去に作られたサフィレットガラスの中には
人知れず未来の色が輝いていたことになります。
私に書けるのはここまでです。
これより先は、科学的なことに明るい方が
サフィレットに関心を持ってくださる日を待つしかありません。

サフィレットの発色の秘密がついに明らかにされる日が来ることを
私は願ってやみません。


サフィレットガラス





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Last Update:2014年11月26日